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キャッシュフロー三原則

●前回はキャッシュフロー経営の三原則についてお話しました。

キャッシュフローは、長いスパンで考えれば、利益=キャッシュとなるはずです。キャッシュフロー経営の三原則が常に守られれば、利益と資金のいずれもが手に入るはずです

●今回はキャッシュフロー三原則の2「運転資本を増加させない営業活動」についてお話します。運転資本とは、営業活動に必要とされる資本で、売掛債権(売掛金+受取手形)、在庫(商品、製品、原材料、仕掛品など)及び買入債務(買掛金+支払手形)により計算します。

運転資本=売掛債権+在庫−買入債務

●原則2の意味は、利益をキャッシュとして残すことです。通常売上を増やそうと思えば、売上数量を増やそうとして在庫を増やし、その結果買掛金が増えますね。またそれが順調に売れたとしても、掛売りで売っていれば、自然に売掛金が増えます。

売上増の場合は、在庫増、買掛金増、売掛金増となるケースが非常に多いです。

そうなるとキャッシュはどうなりますか?

売上は増えても、在庫を増やし、売掛金が増えるので、いくら買掛金が増えて払いを延ばしても、(利益が乗っている以上)売掛金>買掛金ですので、キャッシュはあっという間に消えていきます。

●運転資本が増加しているかどうかチェックする方法はいろいろあります。まず

そのもの前期と比較して運転資本がいくら増えているのか。次に回転日数による方法。さらには要調達率による方法です。

1.前期と比較して運転資本がいくら増えているのか

増加運転資本  =期末運転資本−期首運転資本
利益−増加運転資本=キャッシュ

増加運転資本の分だけ、キャッシュは減少することになるので、利益が出ていても、手元に現金がないなんてことも、経営の現場でしばしば起きます。

2.回転日数による方法

売掛債権回転日数=売上高/売掛債権÷365

在庫回転日数  =売上原価/在庫÷365

買入債務回転日数=売上原価/在庫÷365

売掛債権が売上高の何日分にあたるかという指標で、例えば60日という計算結果になったとしたら、売上計上後平均60日で売掛金を回収していることになります。以下在庫回転日数は、在庫が仕入計上ののち何日で売れていくかを、また買入債務回転日数は仕入計上ののち何日で支払っているかを示す指標です。

3.要調達率による方法

運転資本要調達率=運転資本/売上高×100

売上高に対する運転資本の割合を示し、売上高が増加した場合に、運転資本がいくら増加するかの予測に用いる。仮に要調達率が30%であれば、売上が500万円増加した場合には、150万円運転資本が必要と予測される。

増加売上高500万円×要調達率30%=150万円

このケースで限界利益率が25%だったら、どうなりますか?
そうですね。125万円利益が増えても、150万円運転資本として必要になりますので、売上が500万円増えても、キャッシュは25万円減るという結果になります。

まさに、「勘定あって銭足らず」ですね。 

●これらの指標を用いて、運転資本の増加をチェックして、キャッシュフロー3原則の2を実現することができれば、稼いだ利益がそのままキャッシュとして手元に残ることになります。

経営計画というと、どうしても利益や資金繰りに着目しがちですが、運転資本も非常に大事な考え方ですので、ここで覚えてしまいましょう。  

次回は原則を実現するための運転資本対策についてお話したいと思います。

 

 
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