実践!管理会計
 

総まとめ

●なぜキャッシュフロー経営が大切なのか?

1.借金依存の経営体質
利益中心の拡大・成長経営は規模の拡大をもたらしましたが、規模の拡大ほど利益は増加せず、加えて運転資本の増加により、キャッシュフローは不足するという悪循環になっている。

2.企業業績の悪化
バブル後の長期構造不況により企業の業績悪化が目立ち、とりわけ金融機関の貸し渋りなどで、企業の資金繰りが悪化している。

3.含み益経営の終焉
デフレ時代に突入し、右肩上がりの経済に通用した含み益経営が終わり、利益は中間成果、キャッシュが本当の成果との認識が広がっている。

●キャッシュフロー経営三原則とは?

原則1.適正利益を生み出す
何といっても資金の源泉は利益です。適正利益を確保することがキャッシュフロー経営の第1原則です。

原則2.運転資本を増加させない営業活動
運転資本が増加しなければ利益がそのままキャッシュとして残るはずである。運転資本とは営業活動に必要とされる資本で、売上債権と棚卸資産の管理がカギを握ります。

原則3.営業キャッシュフローの範囲内での設備投資 
営業活動から生み出されたキャッシュフローの範囲内で設備投資を行うことが原則3です。要するに、設備投資を借入金に依存しないことです。

新規事業の立ち上げなどについては一部借入金に依存せざるを得ないことはあっても、経常的な設備投資については営業キャッシュフローの範囲内で行います。

●原則2.運転資本を増加させない営業活動とは?

運転資本とは、営業活動に必要とされる資本で、売掛債権(売掛金+受取手形)、在庫(商品、製品、原材料、仕掛品など)及び買入債務(買掛金+支払手形)により計算します。

運転資本=売掛債権+在庫−買入債務

原則2の意味は、利益をキャッシュとして残すことです。通常売上を増やそうと思えば、売上数量を増やそうとして在庫を増やし、その結果買掛金が増えますね。またそれが順調に売れたとしても、掛売りで売っていれば、自然に売掛金が増えます。

売上は増えても、在庫を増やし、売掛金が増えるので、いくら買掛金が増えて払いを延ばしても、(利益が乗っている以上)売掛金>買掛金ですので、キャッシュはあっという間に消えていきます。

●運転資本が増加しているかどうか、どうチェックするのか?

まずそのもの前期と比較して運転資本がいくら増えているのか。次に回転日数による方法。さらには要調達率による方法です。

1.前期と比較して運転資本がいくら増えているのか

増加運転資本  =期末運転資本−期首運転資本
利益−増加運転資本=キャッシュ

2.回転日数による方法(売掛債権が売上高の何日分にあたるかという指標)

売掛債権回転日数=売上高/売掛債権÷365
在庫回転日数  =売上原価/在庫÷365
買入債務回転日数=売上原価/在庫÷365

3.要調達率による方法(売上高に対する運転資本の割合)

運転資本要調達率=運転資本/売上高×100
増加売上高×運転資本要調達率=必要増加運転資本

●「運転資本を増加させない営業活動」のための対策とは

運転資本対策とは、ひとことで言うと、運転資本を少なくすることです。運転資本が少なくてすむということは、売上が増えても、回収までのつなぎ資金が少なくても大丈夫だということです。そこで運転資本対策ですが、

1.売掛債権を少なくする 
回収条件のよい得意先への売上のシフト、回収条件の悪い取引先には条件の変更を申し入れる。

2.在庫を少なくする
売れ筋商品に絞る。販売予測を的確に行い適正在庫にコントロールする。
こまめに仕入れを行う。

3.買入債務を少なくする
支払いを先延ばしにすることになり、あらぬ噂をたてられても困るので、非現実的です。

●原則3.営業キャッシュフローの範囲内での設備投資とは

設備投資とは、土地・建物や機械装置などにまず資金を投下して、その投資により、将来獲得利益が増加したり、または将来必要費用が減少したりすることで、結果的に投下資金を上回る資金を回収しようとするものです。

これらの設備投資を、営業キャッシュフローの範囲内で行うことが、キャッシュフロー経営三原則のその3です。言い換えると、自己資本の範囲内で、設備投資をし、借入金に依存しないことです。

新規事業の立ち上げや新店舗の開店などの大型の設備投資は別としても、経常的な設備投資は営業キャッシュフローの範囲内で行うようにしたいものです。

●新規事業の立ち上げなどの大型の設備投資はどうするのか。

その際には、投資額がまず確実に回収できること、それから投下資本が新たな価値を生み出すことが、設備投資判断の条件であり、これらの根拠のしっかりした設備投資計画を立案する必要があります。設備投資計画の立て方は、一般的に以下の通りです。

1.設備投資額の予想 
設備投資額は年度ごとに必要資金を見積もります。(投資額の時間価値を無視した場合)

2.売上高の予想 
設備投資をしたことによる増加売上高を、できる限り合理的な方法にて予想します。製造業では機械装置の生産能力×予想稼働率、小売業では床面積×坪当たりの平均売上高などが予想方法として適当です。

3.ランニングコストの予想
設備投資をしたことによる増加ランニングコストを予想します。変動費及び固定費に分類した上で、さらに固定費を人件費、設備費、その他の固定費に分類して予想します。

4.耐用年数の見積り
設備の耐用年数を見積ります。これは決して税法の法定耐用年数でなくてはならないというものではありません。

5.増加運転資本の見積り
前回まで学習した運転資本が、どのくらい必要になるのかを見積もります。売掛債権+在庫−買入債務が、キャッシュフロー経営三原則のその2を遵守することで、できるだけ少なくする方策を考えます。

6.資金調達方法の検討 
1から5までを集計して、必要調達資金額を求め、調達方法を検討します。銀行借入の方法によるのか、自己資金を投下するのか、それとも増資や社債など他の方法によるのか、検討します。

 

 
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